ショートストーリー「諦念退就職教職員」
昔々その昔、一年くらい昔のこと。
とある中堅私立大学に、またまたとある大学三年生がいました。
彼の名前は優柔不断くん。当時も今も絶賛大流行中の"シューカツ生"というものの波に乗っていたのです。
優柔不断くんはよく「俺は民間に就職するよ!でも、いざという時のために教職過程を履修してるんだ、どうせ使わないけどね。講義も出てないし、単位だけもらえればいいや」と言っていました。
周りの人も「そうか。うんうん。いいんじゃない?君がいいと思うなら。そうしなよ。うんうん」と頷いてあげているようでした。
さて、12月から就職活動が始まりました。
黒衣を身に纏った恐ろしき軍勢が"ゴウドウセツメイカイ"や"オービーホウモン"に押し寄せる、あの悪夢のような日々が始まったのです。
ああ恐ろしい。
優柔不断くんも例に漏れず、黒衣を身に纏い、出撃です。
……今思い返すと、この時が優柔不断くんが最も輝いていた時だったのかもしれません。
優柔不断くんは、名前の通り、最強の優柔不断です。本人は気づいていませんが、最強です。本人は気づいていませんがね。
彼は「名前を知っているから」「楽しそうだから」「商品が好き〜〜」などなどという理由だけで多くの有名企業を受け続け、何社、何十社、何百社もエントリーを繰り返しました。
その姿はまさに戦士。
強大な"シューカツ"という敵に立ち向かう勇者そのものでした。
しかし、実のところそれは、真っ裸で強大な敵に立ち向かう無知な勇者……いえ、愚者の姿だったのかもしれません。
彼には"シューカツ"と戦うための武器を持っていなかったのです。
……
戦いを繰り返せば繰り返すほど落ちては落とされ、繰り返せば繰り返すほど優柔不断くんは自分がわからなくなります。
「なんで落ちるんだ!?」
理由がわからず、優柔不断くんはその度に叫びました。
そしてその叫びは、一ヶ月二ヶ月三ヶ月経過する度に優柔不断くんの心の中で反響し、ついにこう叫び返してきました。
「きっと俺は民間就職は向いてないんだ!そうだ、教職があるじゃないか!俺は教職に向いてるんだ!絶対そうなんだ!」
ついに優柔不断くんは民間就職を諦め、自分の言葉を忘れ、教職員になることを選びました。
…………
その後、彼がどうなったかを知る人はほとんどいません。
もしかしたら本当に教職員に向いていて、楽しく試験勉強をしているかもしれません。
もしかしたらまた民間就職の道を探し始めているかもしれません。
そして
もしかしたら
優柔不断くんは
あなたの心の中に住み着いているかもしれませんね?
教職員はとても立派な職業です。
なのでその分、民間就職から逃げてこの職を志望するのは何か違う気がします。
民間就職から逃げて公務員になるのも同様です。
でもうまく説明できないので、ショートストーリーにしてみました。
もし自分の心の中に優柔不断くんが住み着いているかもしれないと思ったら、早めに退去してもらうための策を講じましょう!
準備があれば、人は勇者になれる可能性を持っているのですから。
ではでは
ば〜い!
@jacjac__jack